みなと健康ステーション

第6回 杖

杖は早めに使用しましょう!

今回は杖についてお話したいと思います。理学療法士として病院や、介護の現場で働いていると杖をお勧めする機会が多くあります。杖をお勧めすると多くの方が「かっこ悪い。」「まだそんな年寄りじゃない。」とおっしゃいます。
やはり杖に対してあまり良いイメージが無いのでしょうか?しかし関節を診る機会が多い職業柄、私は杖を早めに使われる事をお勧めしています。痛みや不安を我慢していても良い事はありません。
膝の痛みを我慢して無理をすると炎症が続いてしまいます。炎症が続くと関節に水が溜まり、関節液が水で薄められます。関節液は、関節軟骨を摩耗と衝撃から保護する作用がありますが、薄められるとその作用を失ってしまい、更に関節に負担がかかるという悪循環に陥ります。
ですから、膝関節痛や股関節痛等でお悩みの方は、初めは痛むときだけでも良いので早い段階から杖を使用し、少しでも関節への負担を減らす事で更なる炎症を防ぐ事をお勧めいたします。

杖の正しい突き方は?

実際に杖と言ってもどのように突いていいのか、どんな物を選べば良いのか、杖に対する知識が世の中にあまり浸透していないように思います。まず突き方についてですが、「痛めている方の足、力が弱い方の足の反対側の手に持つ事」基本的にはこれが一番重要です。
試しに少し歩いてみてください。右足を踏み出している時、手は左手を前に振り出しているはずです。逆に左足を踏み出す時は、右手が前に振り出されます。(図1)この動きを確認して頂き、あとは痛い足の反対側の手で杖を持って歩いて頂ければ結構です。(図2)

手と足の動きは体の捻る動きによるもので、歩行時にバランスを取るための動きの一つです。この"捻り"のリズムを崩すと歩行の効率は下がり、安定性も低下します。もし、悪い側の足と同じ側の手に杖を持てば、"捻り"を使って歩くことが出来ません。おそらく同じ側の手と足が一緒に前に出てロボットのような歩き方になっている事でしょう。それは歩行の上で非常に不利な事です。(図3)

"捻り"の動きも含め、歩行パターンの原型が中枢神経の奥底にあります。もっと厳密に言えば、大脳よりも下層の脊髄レベルに刻み込まれています。脊髄に考える機能はありませんから、別にわざわざ大脳で難しい事を考えなくても持つ手さえ間違わなければ、脊髄の方で自然に身体を動かしてくれるはずです。
「初めて杖を買ったから突き方を教えて」という方にはいつも「(杖を)ただの軽い荷物を持っている感覚で歩いてください。」と言います。実際にそれだけでほとんどの方は上手に杖を使用できています。
しかし、痛みが非常に強い場合や、いまにも転倒しそうなくらい不安定な場合には、勝手に身体は動いてくれません。この場合には3拍子の揃え型歩行をお薦めしています。
持ち手は基本通り、痛い方と反対側の手に持ちます。そして、手足を出す順番ですが、①杖を前に突いてから、②次に痛い方の足を前に出します。杖と痛い方の足が前に出たら、③杖に体重を預けながら良い方の足を痛い方の足に揃えます。①→②→③、①→②→③と3拍子数えながら歩くと良いでしょう。(図4)

ちなみに基本の歩行リズムはいま地上を動き回っているほぼ全ての脊椎動物で共通です。杖を使ってお散歩に行かれた時等イヌやネコなどの動きも観察してみて下さい。違った視線で観察してみると面白いですよ。

以上、簡単にご説明させて頂きましたが詳しくは掛かりつけのクリニックや福祉用具専門店等にご相談下さい。杖は格好悪くなんてありません。痛みを我慢せず早めに正しく使用し健康に生活していきましょう。

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