電気療法Electrical Therapy

電流や電磁波、電位などの電気エネルギーを用いる治療法です。
電磁波を用いるものにマイクロ波治療器がありますが、これは組織の加温に用いますので、温熱療法の項で述べます。

a. 電流(低周波)療法

電流は神経筋システムに作用し、筋を収縮させ、血流を増加させ、疼痛を抑制します。この作用を利用し、血流改善、筋萎縮の予防、拘縮や痙性の改善、随意運動能の回復、末梢神経や皮膚等の組織損傷の修復、疼痛緩和、機能代行などに使用されます。

1)干渉電流型低周波治療器Interferencial Current Therapy unit

概要 治療周波数分だけ周波数の異なる2つの搬送波電流を電極を介して皮膚表面から通電することにより生体内で干渉させ、筋肉・神経に刺激を与える装置です。
血流改善、疼痛緩和、筋萎縮の予防、拘縮や痙性の改善、随意運動能力の回復などの目的に使用されます。
電流の周波数が高く、皮膚抵抗が低いため不快な電気刺激感が少なく、治療部位を効率的に刺激することができるという特長を有します。
使用目的又は効果 経皮的に鎮痛及び筋萎縮改善に用いられる神経及び筋刺激を行う。
適応 脳血管障害や脳性麻痺、脊損などの痙性の軽減、廃用性筋萎縮の改善、関節可動域の拡大、筋力向上、随意運動能力の回復、骨折の治癒促進、疼痛緩和等。
禁忌
次のような人は使用しないこと。
  1. ①心臓疾患、植込み型電子装置(ペースメーカなど)使用者、悪性腫瘍、結核性疾患、急性疾患、極度の衰弱時、妊婦もしくは妊娠の可能性がある人、アトピーなどによる知覚・皮膚過敏症、幼児または意思表示のできない人、血流障害の可能性がある人。
  2. ②その他、医師が不適当とみなした人。
  3. ③次のような場合は、医師の判断によること。
    血圧異常、有熱者、感染症

2)低周波治療器Low Frequency Therapy unit

概要 経皮的に鎮痛や筋萎縮改善に用いる神経及び筋刺激装置をいい、外部刺激装置及び電極から構成されます。電極は皮膚に置き、身体に挿入しないため、電気刺激が皮膚を経て(経皮的に)痛みのある部位又は筋障害部位に供給されます。通常、いくつかの予め設定された調節オプション(パルス周波数、パルスの持続時間等)を備えます。経皮的電気神経刺激装置(TENS)、電気的筋刺激装置(EMS)及び知覚閾値や筋収縮閾値の近傍で使用するマイクロアンペアオーダーの微弱電流治療器や、パルス幅の狭い高電圧の2連パルスを用いる高電圧治療器も使用されています。
使用目的又は効果 経皮的に鎮痛及び筋萎縮改善に用いられる神経及び筋刺激を行う。
適応 脳血管障害や脳性麻痺、脊損などの痙性の軽減、廃用性筋萎縮の改善、関節可動域の拡大、筋力向上、随意運動能力の回復、骨折の治癒促進、疼痛緩和等。
禁忌
次のような人は使用しないこと。
  1. ①心臓疾患、植込み型電子装置(ペースメーカなど)使用者、悪性腫瘍、結核性疾患、急性疾患、極度の衰弱時、妊婦もしくは妊娠の可能性がある人、アトピーなどによる知覚・皮膚過敏症、幼児または意思表示のできない人、血流障害の可能性がある人。
  2. ②その他、医師が不適当とみなした人。
  3. ③次のような場合は、医師の判断によること。
    血圧異常、有熱者、感染症

3)低周波治療器(経皮的神経電気刺激装置)TENS (Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation) unit

概要 経皮的に鎮痛や筋萎縮改善に用いる神経及び筋刺激装置です。1965年、MelzackとWallがゲートコントロール理論を提唱して以降、注目されるようになりました。鎮痛の作用機序として、ゲートコントロール理論、末梢神経の信号伝達ブロック、内因性疼痛抑制機構、下降性疼痛抑制系などが考えられています。
使用目的又は効果 経皮的に鎮痛及び筋萎縮改善に用いられる神経及び筋刺激を行う。
適応 脳血管障害や脳性麻痺、脊損などの痙性の軽減、廃用性筋萎縮の改善、関節可動域の拡大、筋力向上、随意運動能力の回復、骨折の治癒促進、疼痛緩和等。
禁忌
次のような人は使用しないこと。
  1. ①心臓疾患、植込み型電子装置(ペースメーカなど)使用者、悪性腫瘍、結核性疾患、急性疾患、極度の衰弱時、妊婦もしくは妊娠の可能性がある人、アトピーなどによる知覚・皮膚過敏症、幼児または意思表示のできない人、血流障害の可能性がある人。
  2. ②その他、医師が不適当とみなした人。
  3. 次のような場合は、医師の判断によること。
    血圧異常、有熱者、感染症

4)機能的電気刺激装置FES (Functional Electrical Stimulation) unit

概要 脳卒中や脊損などにより上位ニューロンがダメージを受け末梢の機能が果たせなくなったとき、末梢側の神経を電気刺激して生体の動きを制御し失われた機能を再建することを目的とするものです。上肢・下肢等の運動機能の制御、排尿・呼吸・心臓のペーシング、視覚、聴覚、皮膚感覚の代行などが研究されています。最近は、単に動作の機能代行だけでなく、神経や筋その他の機能の回復(治療)についても研究されています。

5)骨刺激装置Bone Stimulation unit

概要 骨の形成(骨形成)を電気的に刺激する装置です。難治性骨折(骨折した骨の末端が結合していない状態)での骨移植の代替療法及び脊椎固定術の補助療法として用いられます。本品は、骨折又は固定部位周辺に弱い電流を流すか、又は電磁場(随伴する誘導電圧効果)を発生させます。骨形成刺激装置ともいいます。

b. 電位療法Electric Potential Therapy

数百ボルト以上の高電位を生体に付加する治療法です。

1)電位治療器Electric Potential Therapy unit

概要 数百から数万Vの交流電圧、又は数百から千V程度の直流電圧を発生させ、これを大地から絶縁状態にした人体に加えることで、全身的な作用を及ぼすと考えられている装置です。
適応・使用目的又は効果 頭痛、肩こり、不眠症及び慢性便秘の緩解。
禁忌
次のような人は使用しないこと。
  1. ①ペースメーカ等、体内植込み形医用電子機器を使用している人。
  2. ②心電計、人工呼吸器等、医用電子機器を装着している人。
  3. ③人工関節や人工臓器等、体内に金属を埋め込んでいる人。
  4. ④急性期疾患、悪性腫瘍、有熱性疾患、血圧異常、心臓疾患、妊娠または妊娠している可能性のある人、新生児、乳幼児、または意思表示のできない人、知覚障害、化膿性疾患、皮膚疾患、疾患などで体力が低下している人、出血要素の高い人。
  5. ⑤その他、医師が不適当とみなした人。