リハビリテーションマネジメント加算とは?通所・訪問リハビリテーションにおける加算要件と算定方法

2025年7月10日

高齢化が進む中、リハビリテーションの重要性が増しています。リハビリテーションマネジメント加算は、調査、計画、実行、評価、改善のサイクルを通じて、心身機能の向上だけでなく、日常生活動作や社会参加といった機能をバランスよく支援することを目的とした制度です。

本記事では、リハビリテーションマネジメント加算の仕組みや算定要件について詳しく解説します。

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リハビリテーションマネジメント加算の概要

リハビリテーションマネジメント加算は、リハビリテーションの質を向上させるために、多職種が共同して、心身機能や、日常生活での活動・参加をするための機能に、バランス良くアプローチするリハビリテーションが提供できているかを継続的に管理し、その取り組みを評価するものです。

リハビリテーションマネジメントは、SPDCAサイクル(調査・計画・実行・評価・改善)を通じて、利用者の心身機能やQOL(生活の質)の向上を目指します。

調査:利用者の希望や健康状態などの把握
計画:課題の明確化
実行:医師の指示のもと、適切な訓練や環境調整
評価と改善:介入効果を検証、計画の見直し

リハビリテーションマネジメント加算の目的と算定要件

リハビリテーションマネジメント加算の目的は、高齢者の尊厳ある自己実現を目指すという観点から、利用者の生活機能の向上を目指すことです。介護保険サービスを担う専門職やその家族などが協働して、継続的な「サービスの質の管理」を通じ、適切なリハビリテーションを提供し、利用者の要介護または要支援状態の改善や悪化の防止に努めます。
算定要件には、計画表の作成と説明、会議の実施、科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence:以下LIFE)の使用が含まれます。

LIFEの導入について、詳しくは⇒「科学的介護情報システムとは?特徴や導入までのステップを紹介」で解説しています。あわせてご覧ください。

通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算

通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算は、リハビリテーションの質を向上させるために設けられた評価です。
自立支援・重度化防止に向けて、さらなる質の高い取組を促すために、医師をはじめとする多職種が連携し、計画策定、定期的な評価、リハビリテーション会議の実施を行い、利用者の機能回復とQOLの向上を目指します。

適切な加算を受けるためには、都道府県知事等への届出が必要であり、算定要件によってLIFEを用いた報告が必要です。

通所リハビリテーションにおける算定要件と留意事項

通所リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算の算定には、「イ」「ロ」「ハ」の3つの加算区分があり、要件を満たすことで段階的に加算を受けられます。

加算区分対象期間算定単位数
(1か月あたり)
主な要件
リハビリテーションマネジメント加算(イ)(1)6か月以内560単位・リハビリテーション会議の開催
・理学療法士(以下PT)、作業療法士(以下OT)、言語聴覚士(以下ST)利用者等に説明・同意を得る
・医師へ報告 等
リハビリテーションマネジメント加算(イ)(2)6か月超240単位同上
リハビリテーションマネジメント加算(ロ)(1)6か月以内593単位・加算(イ)の要件を満たす
・LIFE(科学的介護情報システム)を利用し、リハビリテーション計画を厚生労働省へ提出
・LIFEからのフィードバックを受ける 等
リハビリテーションマネジメント加算(ロ)(2)6か月超273単位同上
リハビリテーションマネジメント加算(ハ)(1)6か月以内793単位・加算(ロ)の要件を満たす
・事業所の従業者または外部との連携で管理栄養士を1名以上配置
・ST、歯科衛生士または看護職員を1名以上配置
・多職種が共同して栄養アセスメントおよび口腔の健康状態の評価を行う
・ST、歯科衛生士または看護職員が、その他の職種と共同して口腔の健康状態を評価し、解決すべき課題を把握
・利用者ごとに、関係職種がリハビリテーション計画や口腔・栄養状態の情報を共有
・共有情報を踏まえ、必要に応じてリハビリテーション計画を見直し、関係職種へ情報提供 等
リハビリテーションマネジメント加算(ハ)(2)6か月超473単位同上

出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」
出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」
出典:厚生労働省「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」
をもとに筆者にて作成

医師が利用者またはその家族に対してリハビリテーション計画について説明を行い、同意を得た場合には、追加で270単位を算定できます。

サービス利用開始から6か月を超えた後に再利用する場合、原則として加算イ⑴、ロ⑴、ハ⑴の再算定はできず、イ⑵、ロ⑵、ハ⑵を算定します。ただし、病状の再発や医師の判断で集中的な医学的管理が必要とされた場合は、例外として再算定が認められます。

リハビリテーションマネジメント加算の算定には、都道府県知事等への届出が必要で、老健局長の定める様式に従う必要があります。加算(ロ)ではLIFEシステムを活用し、厚生労働省への情報提出とフィードバックの活用が求められます。加算(ハ)では管理栄養士や歯科衛生士も関与します。

家族の参加が推奨されますが、難しい場合は電話や書面で情報を共有します。医師やPT・OT・ST、介護支援専門員らが参加するリハビリテーション会議を定期的に開催し、利用者の状態を評価し計画を調整します。参加者が遠方である場合、テレビ電話装置を用いた会議も可能ですが、利用者や家族が参加する際は事前の同意が必要です。

訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算

訪問リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算は、多職種が協働し、継続的にリハビリテーションの質を管理した場合に算定可能です。
利用者の生活環境に即した計画的なリハビリテーションの提供を評価する制度です。通所リハビリテーションと同様に医師やPT、OT、STなどが連携し、計画策定、実施、評価、見直しを行うことが求められます。利用者や家族への説明と同意取得も必要であり、都道府県知事等への届出と電子情報処理組織を用いた報告が必要です。

訪問リハビリテーションにおける算定要件と留意事項

訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメント加算の算定には、「イ」「ロ」の二つの加算区分があり、要件を満たすことで段階的に加算を受けることが可能です。

加算区分算定単位数
(1か月あたり)
主な要件
リハビリテーションマネジメント加算(イ)180単位・リハビリテーション会議の開催
・PT、OT、STが利用者等に説明・同意を得る
・医師へ報告 等
リハビリテーションマネジメント加算(ロ)213単位・加算(イ)の要件を満たす
・LIFE(科学的介護情報システム)を利用し、リハビリテーション計画を厚生労働省へ提出
・LIFEからのフィードバックを受ける 等

出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」
出典:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」をもとに筆者にて作成

医師が利用者またはその家族に対してリハビリテーション計画について説明を行い、同意を得た場合には、追加で270単位を算定することが可能です。

訪問リハビリテーション計画でも通所リハビリテーションと同様に、計画書の作成や、3か月ごとの評価・見直し、リハビリテーション会議の開催が必要です。

加算(ロ)ではLIFEシステムを使用し、厚生労働省への情報提出とフィードバックの活用が求められます。

まとめ

リハビリテーションマネジメント加算は、通所・訪問リハビリテーションの質を向上させるために設けられた評価です。適切な計画の策定、リハビリテーション会議の実施、多職種の連携が求められ、加算要件を満たすことで報酬が算定されます。

事業所は、要件を正確に理解し、計画的なリハビリテーションの提供を行うことで、利用者の機能回復を支援しながら、安定した経営につなげることが重要です。


執筆者プロフィール

北野百恵(理学療法士/ライター)
デイサービスで介護分野のリハビリを経験したのち、急性期病院で地域医療にも貢献。3学会合同呼吸療法認定士の資格を持ち、内部疾患にも精通し、現在も病院でリハビリに従事している。医療現場での経験を活かして、読み手に適切な情報が届くライターとしても活躍。