サービス提供体制強化加算とは?算定要件や単位数について解説

2025年7月1日

サービス提供体制強化加算は、質の高い介護サービスを提供する介護施設や事業所を評価する加算です。

本記事では、サービス提供体制強化加算の対象となる介護サービスや、各サービスの単位数と算定要件について解説します。

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サービス提供体制強化加算の概要

サービス提供体制強化加算とは、介護福祉士などの介護職員の配置基準を満たし、質の高いサービスを提供する介護施設や事業所を評価する加算です。加算の区分は「サービス提供体制強化加算Ⅰ」「サービス提供体制強化加算Ⅱ」「サービス提供体制強化加算Ⅲ」に分類され、それぞれ単位数と算定要件が異なります。

単位数や算定要件は各介護サービスによっても異なり、それぞれの介護施設や事業所に合った算定要件を満たしたうえで、市町村に届け出ることで適用されます。また、令和3年度の介護報酬改定から、サービスの質の向上や職員のキャリアアップを推進するために、在籍している介護福祉士の人数や勤続年数を評価する算定要件が新たに設けられています。

算定対象となる介護サービスは

サービス提供体制強化加算の算定対象となる介護サービスは以下が挙げられます。

介護サービス介護予防サービス地域密着型サービス
訪問入浴介護費介護予防訪問入浴介護費定期巡回・随時対応型訪問介護看護費
訪問看護費(ⅠⅡのみ)介護予防訪問看護費(ⅠⅡのみ)夜間対応型訪問介護費
訪問リハビリテーション費(ⅠⅡのみ)介護予防訪問リハビリテーション費(ⅠⅡのみ)地域密着型通所介護費
通所介護費介護予防通所リハビリテーション費認知症対応型通所介護費
通所リハビリテーション費介護予防短期入所生活介護費小規模多機能型居宅介護費
短期入所生活介護費介護予防短期入所療養介護費(介護老人保健施設、療養病床を有する病院、診療所、介護医療院)認知症対応型共同生活介護費
短期入所療養介護費(介護老人保健施設、療養病床を有する病院、診療所、介護医療院)介護予防特定施設入居者生活介護費地域密着型特定施設入居者生活介護費
特定施設入居者生活介護費地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
介護福祉施設サービス複合型サービス費
介護保健施設サービス介護予防認知症対応型通所介護費
介護医療院サービス介護予防小規模多機能型居宅介護費
介護予防認知症対応型共同生活介護費

出典:厚生労働省 「介護報酬の算定構造」をもとに筆者にて作成

各サービスの単位数と算定要件

各介護サービスにおいて、サービス提供体制強化加算の単位数や算定要件は異なります。今回は通所介護、地域密着型通所介護、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションの単位数と算定要件について解説していきます。

通所介護における加算の単位数

通所介護(デイサービス)は、通所施設で利用者の能力に応じた生活機能の維持または向上を目指し、食事や入浴などの日常生活の支援や機能訓練などを提供するサービスです。通所介護の施設は利用定員が19人以上で、介護1〜5の認定を受けた人が利用できます。

サービス提供体制強化加算の単位数は以下のとおりです。

・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):22単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):18単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅲ):6単位/回(日)

通所介護における加算の算定要件

通所介護におけるサービス提供体制強化加算の算定要件は以下のとおりです。

加算算定要件
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)・全ての介護職員のうち介護福祉士が70%以上在籍している
・または勤続10年以上の介護福祉士が25%以上在籍している
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)全ての介護職員のうち介護福祉士が50%以上在籍している
サービス提供体制強化加算(Ⅲ)以下のいずれかに該当する場合が対象になる
・全ての介護職員のうち介護福祉士が40%以上在籍している
・指定通所介護を利用者に直接提供する職員の総数のうち勤続7年以上の者が30%以上在籍している
※指定通所介護を利用者に直接提供する職員とは生活相談員、看護職員、介護職員又は機能訓練指導員として勤務を行う職員

出典:厚生労働省 「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」をもとに筆者にて作成

介護福祉士の割合の算出では、常勤換算方法で算出した前年度(4〜2月)の平均値を使用します。前年度の実績が6か月に満たない事業所の場合は、届出をした月の前3か月について、常勤換算法で算出した平均値を使用します。

勤続年数は、各月の前月の末日時点で資格を取得している人の勤続年数から算出します。当該事業所における勤務年数に加えて、同一法人などの経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設などで介護職員として勤務した年数も含まれます。

地域密着型通所介護における加算の単位数

地域密着型通所介護は、通所介護と主な目的やサービス内容などは同じですが、施設の利用定員が19人未満であることが異なります。
また、難病などの重度要介護者やがん末期の者で、サービスの提供時に看護師による観察が必要な場合は、「療養通所介護」となり、その中でも何らかの理由により一定期間サービスを利用する場合は、「短期利用療養通所介護費」に当てはまります。

各サービス提供体制強化加算の単位数は以下のとおりです。

【地域密着型通所介護の場合】
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):22単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):18単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅲ):6単位/回(日)

【療養通所介護の場合】
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):48単位/回(月)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):24単位/回(月)

【短期療養通所介護の場合】
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):12単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):6単位/回(日)


地域密着型通所介護における加算の算定要件

地域密着型通所介護におけるサービス提供体制強化加算の算定要件は、通所介護の場合と同じです。

通所リハビリテーションにおける加算の単位数

通所リハビリテーション(デイケア)は、利用者が通所リハビリテーションの施設に通い、可能な限り自宅で自立した生活が送れるように、食事や入浴などの日常生活の支援や機能訓練、口腔機能向上サービスなどを提供するサービスです。

サービス提供体制強化加算の単位数は、要介護または要支援の認定によって異なります。

【要介護1〜5の認定を受けた場合(通所リハビリテーション)】
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):22単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):18単位/回(日)
・サービス提供体制強化加算(Ⅲ):6単位/回(日)

【要支援1・2の認定を受けた場合(介護予防通所リハビリテーション)】
・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):[要支援1]88単位/回(月)、[要支援2]176単位/回(月)
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):[要支援1]72単位/回(月)、[要支援2]144単位/回(月)
・サービス提供体制強化加算(Ⅲ):[要支援1]24単位/回(月)、[要支援2]48単位/回(月)


通所リハビリテーションにおける加算の算定要件

通所リハビリテーションにおけるサービス提供体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定要件は、通所介護の場合と同じです。サービス提供体制強化加算(Ⅲ)は、以下のいずれかに該当する場合が対象になります。

・全ての介護職員のうち介護福祉士が40%以上在籍している
・指定通所リハビリテーションを利用者に直接提供する職員の総数のうち勤続7年以上の者の介護福祉士が30%以上在籍している

※通所リハビリテーションを直接提供する職員とは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、または介護職員として勤務を行う職員を指します。

訪問リハビリにおける加算の単位数

訪問リハビリテーションは、利用者が可能な限り自宅で自立した生活が送れるように、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問して、心身機能の維持・回復や、日常生活の自立に向けたリハビリテーションを提供するサービスです。サービス提供体制強化加算の単位数は、要介護者、要支援者ともに以下になります。

・サービス提供体制強化加算(Ⅰ):6単位/回
・サービス提供体制強化加算(Ⅱ):3単位/回

訪問リハビリにおける加算の算定要件

訪問リハビリテーションにおけるサービス提供体制強化加算の算定要件は以下のとおりです。

加算算定要件
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)勤続年数7年以上の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが1人以上在籍している
サービス提供体制強化加算(Ⅱ)勤続年数3年以上の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが1人以上在籍している

出典:厚生労働省 「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」をもとに筆者にて作成

勤続年数は、各月の前月の末日時点で資格を取得している人の勤続年数から算出します。当該事業所における勤務年数に加えて、同一法人などの経営する他の介護サービス事業所、病院、社会福祉施設などで介護職員として勤務した年数も含まれます。

まとめ

サービス提供体制強化加算の算定要件は、介護職員の配置や勤続年数などに指定があり、各介護サービスによって異なります。
サービス提供体制強化加算を適切に算定することで、介護施設や事業所の運営基盤を強化し、収益の安定にもつながるでしょう。

執筆者プロフィール

松村はるか(理学療法士/保健医療学博士/医療ライター)
高齢化地域の大学病院で急性期、回復期、外来のリハビリに従事し、幅広い疾患の臨床経験を積む。同時に整形外科疾患の研究活動にも取り組み、医学論文の投稿や海外学会での研究発表も経験。現在はその経験を活かし、医療ライターとして活動している。