短期集中個別リハビリテーション実施加算とは? 算定要件や短期集中リハビリテーション実施加算・認知症短期集中リハビリテーション実施加算との違いについて解説

2025年7月10日

短期集中個別リハビリテーション実施加算は、要介護認定を受けている利用者が入院・入所からの退院・退所直後や、新たに要介護認定を受けた後、短期間で集中的にリハビリテーションを受ける場合に適用される加算です。通所リハビリテーションが対象となり、一定の要件を満たすことで算定可能となります。

本記事では、短期集中個別リハビリテーション実施加算の概要や算定要件、具体的な算定方法について、名称が似ている短期集中リハビリテーション実施加算、認知症短期集中リハビリテーション実施加算について解説します。

━目次━

短期集中個別リハビリテーション実施加算の概要

算定対象となる介護サービスは1種類
短期集中個別リハビリテーション実施加算の単位数と算定要件

短期集中リハビリテーション実施加算とは

⑴短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)(Ⅱ) (介護老人保健施設)
⑵短期集中リハビリテーション実施加算(訪問リハビリテーション)

認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは

⑴認知症短期集中リハビリテーション実施加算(介護老人保健施設)
⑵認知症短期集中リハビリテーション実施加算(通所リハビリテーション)
⑶認知症短期集中リハビリテーション実施加算(訪問リハビリテーション)


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短期集中個別リハビリテーション実施加算の概要

短期集中個別リハビリテーション実施加算は、リハビリテーションを必要とする要介護認定者が退院・退所後、早期に自宅での日常生活活動を向上させるために、短期間で集中的なリハビリテーションを受けることを目的としています。

算定対象となる介護サービスは1種類

短期集中個別リハビリテーション実施加算の算定対象となる介護サービスは、通所リハビリテーションのみです。
訪問リハビリテーションや介護保険施設では、名称の似ている「短期集中リハビリテーション実施加算」が適用されるため、事業所はそれぞれの要件を適切に把握し、適用可能な加算を選択することが求められます。
なお、「短期集中リハビリテーション実施加算」と「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」については後ほど説明をします。

短期集中個別リハビリテーション実施加算の単位数と算定要件

短期集中個別リハビリテーション実施加算の単位数は、1日につき110単位と設定されています。本加算を算定するには、以下の要件を満たす必要があります。
● 利用者が退院・退所または要介護認定を受けた後、3か月以内
● 1週間につきおおむね2日以上のリハビリテーションを実施
● 医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が1日あたり40分以上の個別リハビリテーションを実施

なお以下の加算を算定している場合には、短期集中個別リハビリテーション実施加算を併用することはできません。
● 認知症短期集中リハビリテーション実施加算
● 生活行為向上リハビリテーション実施加算
リハビリテーション提供の頻度や内容を十分に検討し、適切に実施することが求められます。

次に、短期集中個別リハビリテーション加算と名称が似ている「短期集中リハビリテーション実施加算」について説明します。

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短期集中リハビリテーション実施加算とは

短期集中リハビリテーション実施加算は、退院・退所後の早期にリハビリテーションを集中的に実施することで、利用者の生活機能の向上を目的とした加算です。

⑴短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)(Ⅱ) (介護老人保健施設)

介護老人保健施設における短期集中リハビリテーション加算には、「短期集中リハビリテーション実施加算(I)」と「短期集中リハビリテーション実施加算(II)」の二種類があり、それぞれの算定要件が異なります。

加算の種類算定要件算定単位数
短期集中リハビリテーション実施加算(I)●入所日から3か月以内に実施258単位/日
●入所者に対して、医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が1回20分以上の個別リハビリテーションをおおむね週3回以上実施
●過去3か月間に介護老人保健施設に入所したことがない場合
※ただし、4週間以上の入院後に再入所、もしくは4週間未満の入院での以下のいずれかに当てはまり再入所、短期集中リハビリテーションの必要性が認められる場合は算定可能

・脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、脳外傷、脳炎、急性脳症(低酸素脳症等)、髄膜炎等を急性発症した者

・上・下肢の複合損傷(骨、筋・腱・靭帯、神経、血管のうち3種類以上の複合損傷)、脊椎損傷による四肢麻痺(一肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、切断・離断(義肢)、運動器の悪性腫瘍等を急性発症した運動器疾患又はその手術後の者
● 入所時および月1回以上のADL評価を実施
● 評価結果をLIFEを用いて厚生労働省に提出
● 必要に応じてリハビリテーション計画書の見直し
など
短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)の要件のうち月1回以上のADL評価、LIFEの提出を行わない場合に算定200単位/日

出典:厚生労働省 「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」をもとに筆者にて作成

なお、短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅰ)と短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)は同時に算定することはできません。

⑵短期集中リハビリテーション実施加算(訪問リハビリテーション)

訪問リハビリテーションにおける短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件と算定単位は以下のとおりです。

加算の種類算定要件算定単位数
短期集中リハビリテーション実施加算●退院(所)日または要介護認定日から3か月以内に実施200単位/日
●医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が週2回以上、1回20分以上のリハビリテーションを実施
など

出典:厚生労働省 
・「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定 居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」

・「厚生労働省告示第七十三号」」をもとに筆者にて作成

次の章では「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」について説明をします。

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認知症短期集中リハビリテーション実施加算とは

認知症短期集中リハビリテーション実施加算は、認知症のある利用者に対して、集中的な個別リハビリテーションを提供する加算です。介護老人保健施設や通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションが対象となります。

以下の加算とは同時に算定できないので注意してください。
● 短期集中個別リハビリテーション実施加算(通所リハビリテーションで算定可能)
● 短期集中リハビリテーション実施加算(介護老人施設・訪問リハビリテーション)

⑴認知症短期集中リハビリテーション実施加算(介護老人保健施設)

介護老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算には、「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)」と「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(II)」の二種類があります。

加算の種類算定要件算定単位数
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)●入所日から3か月以内に実施240単位/日
●入所者に対して、医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が1週に3日を限度とし、1回20分以上の個別リハビリテーションを実施
●当該リハビリテーションに関わる医師は精神科医師又は神経内科医師を除き、認知症に対するリハビリテーションに関する研修を修了
●在宅復帰に向けた記憶訓練や日常生活活動訓練を組み合わせたプログラムを提供
●対象者はMMSE(Mini-Mental State Examination)又はHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)においておおむね5点~25点
●過去3月の間に、認知症短期集中リハビリテーション加算を算定していない場合に限り算定可能
●短期集中リハビリテーション実施加算を算定している場合であっても、別途当該リハビリテーションを実施した場合は当該リハビリテーション加算を算定可能
●退所後生活する場所へ訪問し、生活環境を踏まえたリハビリテーション計画を作成
など
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(Ⅱ)●認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)の算定要件のうち、退所後の生活環境への訪問を行わない場合に算定120単位/日
出典:厚生労働省
・「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」
・「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」 をもとに筆者にて作成
なお、「短期集中個別リハビリテーション実施加算」や「生活行為向上リハビリテーション実施加算」と同時算定はできないので注意してください。

⑵認知症短期集中リハビリテーション実施加算(通所リハビリテーション)

通所リハビリテーションにおける認知症短期集中リハビリテーション実施加算には、「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)」と「認知症短期集中リハビリテーション実施加算(II)」の二種類があり、算定要件と算定単位は以下のとおりです。

加算の種類算定要件算定単位数
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(I)● 退院(所)日または通所開始日から3か月以内に実施240単位/日
● 週2回を限度
● 医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が1回20分以上の個別リハビリテーションを実施
● 当該リハビリテーションに関わる医師は精神科医師又は神経 内科医師を除き、認知症に対するリハビリテーションに関する 研修を修了
● 対象者はMMSE(Mini-Mental State Examination)又はHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)においておおむね5点~25点
など
認知症短期集中リハビリテーション実施加算(II)● 退院(所)日または通所開始日の属する月から3か月以内に実施1,920単位/月
● 医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が1か月に4回以上のリハビリテーションを実施(1か月に8回以上実施することが望ましい)
● 当該リハビリテーションに関わる医師は精神科医師又は神経 内科医師を除き、認知症に対するリハビリテーションに関する 研修を修了
● 対象者はMMSE(Mini-Mental State Examination)又はHDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)においておおむね5点~25点
● 通所リハビリテーション計画の作成・評価にあたっては、利用者の生活環境を把握するために居宅を訪問し、応用的動作能力や社会適応能力を評価(※訪問時にリハビリの実施は不可)
● 評価結果は、利用者および家族に説明
● 認知症の状態に応じた適切な支援内容・利用回数を確保するため、月1回のモニタリングと計画の見直しを行い、医師が説明・同意を得ることが望ましい
● リハビリテーションマネジメント加算の算定が前提
など

出典:厚生労働省
・「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」
・「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定 居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」 をもとに筆者にて作成
なお、「短期集中個別リハビリテーション実施加算」や「生活行為向上リハビリテーション実施加算」と同時算定はできないので注意してください。

⑶認知症短期集中リハビリテーション実施加算(訪問リハビリテーション)

訪問リハビリテーションにおける認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件、算定単位は以下のとおりです。

加算の種類算定要件算定単位数
認知症短期集中リハビリテーション実施加算●退院(所)日または訪問開始日から3か月以内に実施240単位/日
●週2回を限度に実施
●対象は認知症であると医師が判断した者であって、リハビリテーションによって生活機能の改善が見込まれると判断された者
●医師又は医師の指示を受けた理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が実施
など
出典:厚生労働省
・指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示、
・「告示第十九号」、
・「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」より作成

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まとめ

「短期集中個別リハビリテーション実施加算」は、退院・退所後の利用者が短期間で集中的なリハビリテーションを受けることで、自立した日常生活への復帰を促進する制度です。通所リハビリテーションで算定が可能です。 名称の似ている「短期集中リハビリテーション実施加算」は算定要件が異なり、介護保険施設と通所リハビリテーション施設で算定が可能です。 一方、「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」は認知機能の低下した対象者に対して、生活機能の改善を見込まれる高齢者が対象となります。 認知症短期集中リハビリテーション実施加算を算定するためには介護保険施設、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションそれぞれの算定要項に沿った準備が必要です。 加算を適用することで質の高いリハビリテーションを提供し、利用者のQOL向上に貢献することができます。適切な要件を満たし、加算を活用することで、効率的な施設運営を実現しましょう。


執筆者プロフィール

北野百恵(理学療法士/ライター)
デイサービスで介護分野のリハビリを経験したのち、急性期病院で地域医療にも貢献。3学会合同呼吸療法認定士の資格を持ち、内部疾患にも精通し、現在も病院でリハビリに従事している。医療現場での経験を活かして、読み手に適切な情報が届くライターとしても活躍。