デイケアの開業に必要な基準や大事なポイント

2023年03月21日

デイケア(通所リハビリテーション)は、医療機関が提供する通所系の介護サービスです。
デイケアの開業を検討している方の中にも、医療保険の「リハビリ」との違い、介護サービスの運営の仕方などわからないことが多く、悩まれている方もいるのではないでしょうか。本記事ではデイケア開業に必要なポイントを解説します。

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デイケア(通所リハビリテーション)と疾患別リハビリテーションの違いとは?

デイケア(通所リハビリテーション、以下「通所リハビリ」)は介護保険、疾患別リハビリテーション(以下「疾患別リハビリ」)は医療保険で提供されるサービスです。

主な違いについて表にまとめました。

疾患別リハビリデイケア(通所リハビリ)

医療保険介護保険















運動器(Ⅰ)病院:100 平方メートル以上
診療所:45 平方メートル以上
3平方メートルに利用定員 を乗じた面積以上
運動器(Ⅱ)病院:100平方メートル以上
診療所:45平方メートル以上
運動器(Ⅲ)病院・診療所:45 平方メートル以上
脳血管疾患等(Ⅰ)病院・診療所:160 平方メートル以上
脳血管疾患等(Ⅱ)病院:100 平方メートル以上
診療所:45 平方メートル以上
脳血管疾患等(Ⅲ)病院:100 平方メートル以上
診療所:45 平方メートル以上






運動器(Ⅰ)各種測定用器具(角度計・握力計等)、血圧計、平行棒、姿勢矯正用鏡、各種車椅子、 各種歩行補助具等指定通所リハビリテーションを行うに必要な専用の部屋、設備
運動器(Ⅱ)
運動器(Ⅲ)歩行補助具、訓練マット、治療台、砂嚢などの重錘、各種測定用器具等
脳 血 管 疾 患 等(Ⅰ)歩行補助具、訓練マット、治療台、砂嚢などの重錘、各種測定用器具(角度計、握力計等、)血圧計、平行棒、傾斜台、姿勢矯正用鏡、各種車椅子、各種歩行補助具、各種装具(長・短下肢装具等)、家事用設備、各種日常生活動作用設備等※言語聴覚療法を行う場合は、聴力検査機器音声録音再生装置、ビデオ録画システム等必要に応じ、麻痺側の間接の屈曲・伸展を補助し運動量を増加させるためのリハビリテーション用医療機器
脳 血 管 疾 患 等(Ⅱ)
脳 血 管 疾 患 等(Ⅲ)歩行補助具、訓練マット、治療台、砂嚢などの重錘、各種測定用器具



運動器(Ⅰ)運動器リハビリテーションの経験を有する専任の常勤医師1名以上専任の常勤医師1以上
(病院、診療所と併設されている事業所、介護老人保健施設、介護医療院では、当該病院等の常勤医師との兼務で差し支えない。
運動器(Ⅱ)
運動器(Ⅲ)専任の常勤医師1名以上
脳血管疾患等(Ⅰ)専任の常勤医師2名以上。うち1名は脳血管疾患等リハビリテーションに関する3年以上の臨床経験又は研修会、講習会の受講歴(又は講師歴)を有すること
脳血管疾患等(Ⅱ)専任の常勤医師1名以上
脳血管疾患等(Ⅲ)





運動器(Ⅰ)PT・OT合わせて4名以上(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、介護職員)単位ごとに利用者10人に1以上
(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)上の内数として、単位ごとに利用者100人に1以上
(所要1~2時間の場合、適切な研修を受けた看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ師で可)
運動器(Ⅱ)PT・OTいずれか又は合わせて2名以上
運動器(Ⅲ)PT・OTいずれか1名以上
脳血管疾患等(Ⅰ)①PT5名以上
②OT3名以上
※STを行う場合
③ST1名以上
①~③の合計で10名以上(STのみを実施する場合は別基準あり)
脳血管疾患等(Ⅱ)①PT1名以上
②OT1名以上
※STを行う場合
③ST1名以上
①~③の合計で4名以上(STのみを実施する場合は別基準あり)
脳血管疾患等(Ⅲ)PT・OT・STいずれか1名以上

出典:ミナト医科学総合カタログ付録「疾患別リハビリテーション料一覧(抜粋)」、厚生労働省「通所リハビリテーション

医療保険で行う疾患別リハビリと介護保険で行う通所リハビリの施設要件には、上記の表にあるように大きな違いがあります。 ただし医療機関については、介護保険のリハビリを始めやすくするために特例(みなし指定や1-2時間の通所リハビリ)が設けられ、通所リハビリ、訪問リハビリ、訪問看護などの開設要件が緩和されています。次項で詳しく説明します。

デイケア(通所リハビリテーション)開業の特例について

デイケアを開業するには、介護保険法に基づいて介護サービス事業者の指定を受ける必要があります。介護報酬から支払いを受けるための手続きです。 都道府県などの条例によって定められた人員、設備および運営の基準を満たして、介護事業の申請窓口となる地域を管轄する都道府県や市町村などに申請を行い、デイケア事業所として指定を受けます。申請窓口は開設する地域によって異なるため、事前に確認しておく必要があります。 ただし、平成21年4月以降に病院、診療所など、健康保険法の保険医療機関として指定を受けている事業者は、介護保険法による医療系サービスの事業者として指定されたものとみなされる特例(みなし指定)があります。 みなし指定事業所の場合は、介護サービス事業の指定申請および指定更新申請手続きは不要です。ただし必要な手続きや書類などについては、開設する地域の申請窓口に確認が必要です。

出典:厚生労働省「新たに通所リハビリテーションの指定を受けようとする方に

デイケア(通所リハビリテーション)の開業に必要な条件

デイケアの開業条件は、主に人員基準と設備基準です。申請者が病院、診療所、介護老人保健施設または介護医療院によって異なります。

人員基準

病院、介護老人保健施設、介護医療院の場合

・医師
専任常勤医師を一名以上配置すること。
(病院、介護老人保健施設、介護医療院の常勤医師との兼務可)

・従事者:理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、看護師または准看護師、介護職員
(1)リハビリ単位ごとに、利用者10人以下の場合・・・サービス提供時間帯を通して、通所リハ専属の従事者一名以上を配置すること。
(2)リハビリ単位ごとに、利用者が10人超の場合・・・サービス提供時間帯を通して、利用者数÷10以上の人数の専属従事者を配置すること。 たとえば、定員35名の場合は、35/10=3.5なので4名以上を配置します。

・理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)
上記のうち、リハビリ単位ごとに利用者100名ごとに1名以上の通所リハ専属の従事者を配置すること。100人以下でもサービス提供時間を通して専属従事者1名以上の配置が必要です。常勤でなくてもよく、複数の従事者の配置でも可です。
(特例)サービス提供時間が1〜2時間の場合は、上記従事者の代わりに、適切な研修を受けた看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師一名の配置も可。

診療所の場合

・医師
(1)利用者の数が同時に10人以下の場合・・・専任の医師を一名以上配置すること(非常勤専任医師で可)。 利用者数は専任の医師一名につき48人以下とすること。
(2)利用者の数が同時に10人超の場合・・・専任常勤医師を一名以上配置すること。

・従事者:理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、看護師もしくは介護職員
(1)リハビリ単位ごとに、同時利用者10人以下の場合・・・サービス提供時間帯を通して、通所リハ専属の従事者一名以上を配置すること。
(2)リハビリ単位ごとに、同時利用者10人超の場合・・・サービス提供時間帯を通して、利用者数÷10以上の人数の専属従事者を配置すること。
たとえば、定員35名の場合は、35/10=3.5なので4名以上を配置します。

・専属資格要件
上記のうち、デイケア専属の理学療法士(PT)、作業療法士(OT)もしくは言語聴覚士(ST)もしくは、通所リハビリもしくは類するサービスに一年以上従事の経験を持つ看護師を常勤換算で、0.1以上の確保が必要。
(特例)サービス提供時間が1〜2時間の場合は、上記従事者の代わりに、適切な研修を受けた看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師一名の配置も可。

・管理者
管理者については、人員基準の定めはありませんが、運営基準上、配置が必要です。
医師、もしくはPT、OT、STまたは看護師から選任したものを代行とします。
出典:厚生労働省「通所リハビリテーション

設備基準

デイケアの設備基準を解説します。

病院、診療所の場合

・設置場所
病院または診療所の通所リハビリ専用の部屋を設置する

・リハビリ専用の部屋の条件
必要な広さは、利用者1人当たり3平方メートル以上です。

・機械および器具
サービス提供に必要な機械および器具を確保すること。
(特例)医療保険の脳血管疾患等リハビリテーション、運動器リハビリテーションまたは呼吸器リハビリテーションの届出をしている医療機関が、1~2時間の通所リハビリを実施する場合は、通所リハビリの利用者に対するサービス提供に支障がない限り、同一スペースで機械および器具を共用することもできます。
出典: 厚生労働省 「通所リハビリテーション」社保審一介護給付分科会 第180回資料3 P55

・消防設備
消防法やそのほかの法令などに規定された設備を確実に設置することが必要です。
出典:厚生労働省「通所リハビリテーション」

介護老人保健施設、介護医療院の場合

・設置場所
介護老人保健施設、介護医療院であること

・リハビリ専用の部屋の条件
必要な広さは、利用者1人当たり3平方メートル以上です。 介護老人保健施設の場合は、デイケアの部屋の面積に利用者用に確保された食堂(リハビリテーションに共用されるものに限る)の面積を加えることができます。

・機械および器具
サービス提供に必要な機械および器具を確保すること。

・消防設備
消防法やそのほかの法令などに規定された設備を確実に設置することが必要です。
出典:厚生労働省「介護医療院」

デイケア(通所リハ)のタイプについて

通所リハビリテーションは大きく分けて、要支援1、2の方を対象とした介護予防通所リハビリと、要介護1〜5の方を対象とした通所リハビリがあります。
さらに要介護の方の通所リハビリは、利用時間などで提供サービスも異なります。

介護予防通所リハビリ(デイケア)

介護予防通所リハビリは、要支援1、2の方を対象とした介護予防サービスです。
利用者が要介護になるのを予防し、できるだけ自宅で自立した生活を送ることができるように心身の機能維持を図ることで、生活機能の維持および向上を目指します。

利用者の状態に応じて、生活機能を向上させるための共通サービスに加え、「運動機能の向上」「栄養改善」「口腔機能向上」に関するサービスを提供します。
利用回数は、要支援1の場合は週1回程度、要支援2の場合は週2回程度の利用が多いようです。

1~2時間型通所リハビリ(デイケア)

1〜2時間型通所リハビリの特例のイメージを示します。

1〜2時間型通所リハビリは、サービス提供時間が1時間以上2時間未満の通所リハビリです。
前述した「疾患別リハビリ」(医療保険でのリハビリ)を提供している医療機関が1〜2時間型通所リハビリを提供する場合について、その要件(人員、機能訓練室の面積、設備)が大幅に緩和されました。
そのため1〜2時間型通所リハビリをきっかけとして、通所リハビリを開設する医療機関が増えています。

画像引用:厚生労働省「通所リハビリテーション(参考資料)」

短時間・半日型通所リハビリ(デイケア)

短時間・半日型通所リハビリは、要介護認定者の中でも「短時間で集中してリハビリを受けたい」「入浴、食事、集団レクリエーションは望まない」「体力的に長時間の利用が困難」というニーズに対して、午前・午後の短時間または半日で受けられる通所リハビリです。
サービス提供時間は、2時間以上3時間未満、3時間以上4時間未満タイプのサービスです。

PT、OTなどのリハビリ専門スタッフによる個別・集団リハビリテーションが行われます。物理療法機器、運動療法機器、トレーニングマシンを利用したリハビリを受けることができます。

食事・入浴の提供はないことが多いのですが、利用者が心身機能の維持・向上を目的に送迎サービスを利用して継続的に利用するケースが多いようです。

長時間型通所リハビリ(デイケア)

従来型の通所リハビリは、他の3つの短時間型通所リハと区別するために「長時間型通所リハ」と呼ばれますが、一般的に通所リハビリといえば、長時間型の一日タイプを指します。 リハビリテーションだけでなく、食事や入浴サービスなどの生活支援を行う通所リハビリです。 サービス提供時間は6〜7時間の一日型サービスで、朝夕の送迎に加えて、昼食や入浴も提供されます。

リハビリやトレーニングだけでなく、レクリエーション、おやつ、ティータイムの時間がある場合もあります。
利用頻度は、介護度にもよりますが、週1〜3回の利用者が大半です。

デイケア(通所リハ)の開業で押さえておくべきポイント

デイケアの開業で押さえておくべきポイントを2つ解説します。
1つめは、介護保険で利用できる維持期・生活期リハビリの環境を整備することです。
2つめは、患者様が住み慣れた地域で、医療保険から介護保険のリハビリへスムーズに移行ができることです。
そのためには、医療機関、介護施設、地域包括支援センター、ケアマネージャーなどとの連携を強化することが必要です。

デイケア(通リハ)での維持期・生活期リハビリについて

デイケア(通所リハビリ)は、病院、診療所、老人保健施設や介護医療院が、自院の施設や人員を活用して併設できる介護保険のサービスです。

平成31年4月以降、標準的算定日数を超過した要介護被保険者の方に対する入院外の維持期・生活期の疾患別リハビリテーションを続けることはできなくなりました。しかし、医療機関がデイケア(通リハ)のサービスを提供することで、患者様は医療保険のリハビリから介護保険のリハビリ利用者となって、継続してリハビリを受けることができます。医療機関も自院の施設や人員を活用して介護サービスを提供することができます。

前述のように、特に「1〜2時間型通所リハビリ」は、疾患別リハビリを提供している医療機関にとっては開設要件も緩和され、開業および運営のハードルがかなり低く抑えられています。特例に従い、医療に加えて介護サービス提供後の人員配置や施設利用、利用者確保の計画を立てていきます。

デイケア(通所リハ)による医療介護連携

通所リハビリ事業を安定的に継続していくには、疾患別リハビリの算定日数を超えたあとも、同様のリハビリを同じ医療機関で継続するだけでなく、地域で通所リハビリを必要とする方へ生活機能を維持・向上させるための維持期・生活期リハビリを提供することが必要です。

患者様が介護保険におけるリハビリテーションを希望する場合、リハビリを実施していた医療機関は、患者様の居住地域担当の居宅介護支援事務所(ケアマネージャー)にリハビリの継続が必要なことを指示しなければなりません。指示を受けたケアマネージャーは、居宅サービス計画などを作成し、デイケア事業者と調整します。
ケアマネとの連携はもちろん最重要ですが、地域の医療機関・介護施設などへ積極的に情報発信を行い、通所リハビリが必要になったときに相談してもらえるような関係作りが必須です。

地域連携には一方的な情報発信だけでなく、連携先との情報交換や交流を通して、下記のような協力体制を整えると良いでしょう。
・急性期病院や回復期リハ病棟からの退院患者の受け入れ
・外来で疾患別リハビリを提供する病院・診療所からの算定日数経過後の患者の受け入れ
・地域包括支援センターや居宅介護支援事業者(ケアマネ)からの相談・紹介
・他の介護サービスを提供している医療・介護関係の事業者からの相談・紹介

まとめ

令和2年10月時点の調査で、全国のデイケア事業所数は8,349です。医療保険での維持期リハビリを制限する一方で、医療機関が介護保険でのリハビリを行いやすくなるように制度が緩和されています。効果的な維持期リハビリにより、要介護認定者の増加を食い止めたいとする国の意図が垣間見えるでしょう。
出典:厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概要」

今回は、デイケア(通所リハビリ)での維持期・生活期リハビリについて、医療保険のリハビリと医療機関が行う介護保険のリハビリの違いや、開設要件、通所リハビリの種類や医療機関が開業する場合の特例について解説しました。
積極的に地域のほかの医療機関や介護施設と連携を図り、通所リハビリの特徴を活かした事業展開を行うことが重要です。社会ニーズの高いデイケア開業の検討にお役に立てば幸いです。

 

執筆者プロフィール

奥野美代子
中小企業診断士/医業経営コンサルタント 外資系ブランドPR27年の実績をもとに「魅力発信ブランディング」コーチングで院長のビジョン実現とスタッフ育成を行い、採用・集患に悩むことなく地域から選ばれる開業医の魅力発信・ブランディングを支援します。