私が所属している、計測機器事業部では肺運動負荷モニタリングシステムなどをはじめとした、評価測定機器の販売を行っています。
訪問先としては、病院や研究施設、大学などが主となります。
当社の肺運動負荷モニタリングシステムは心臓リハビリテーションをはじめ、スポーツ領域や栄養管理など様々な場面で活躍しています。心臓リハビリテーションというのは、心疾患やその術後で心臓機能が弱くなった患者様が、心臓の働きや低下した体力を取り戻し、より良い⽣活を送っていただくための総合的なアプローチです。
患者様が、心臓に過度の負担がかからない安全な強度で効果的な運動療法を行うためには、適切な運動処方をする必要があります。この運動処方の際に必要になる患者様に適した運動強度の決定や、運動耐容能(体力)の評価を行うのが、当社の肺運動負荷モニタリングシステムです。
この機器を納入していただき、最大限に有効活用していただけるよう、しっかりとした情報提供を行うこと、そのための専門知識を常に深めていくことを心がけて、日々の営業活動を行っています。
とある病院で、肺運動負荷モニタリングシステムを導入するという話をいただいたときのことです。
詳しく話を聞いていくと、当社の他にもう一社納入を検討しているメーカーがあり、この2社を比較したうえで納入機器を決定するということでした。納入機器の選定方法は、まず2社がそれぞれ30分間のプレゼンテーションを行い、その後、各社の製品のデモンストレーションを1週間ずつ行った上で決定することに。
この肺運動負荷モニタリングシステムは心電計と合わせて使用するので、心電計のメーカーとタッグを組んでプレゼンテーションを行います。時間の割り振りについて心電計メーカーと打ち合わせを行い、30分の中で当社は10分間でプレゼンテーションを行うことになりました。
10分間という短い時間ですので、いつも以上に要点を絞り、的を射た説明をしなければいけません。これには非常に頭を悩ませました。まず機器のどの特徴、利点を伝えるかを、病院の状況を考慮しながら精査し、取捨選択をしていきました。
その次に、当社の機器の魅力を伝えるために、様々な資料を作成し、試行錯誤を重ねました。しかしなかなか納得のいく資料ができません。本番までの1週間は営業所に遅くまで残り、日々の業務をこなしながら資料を作成に没頭する日が続きました。本当にこれで良いのかと悩む中、本番の日が迫り強い焦りを感じていました。
行き詰っている部分は上司からアドバイスを貰ったりしながら作成を続け、本番まであと数日というところで資料がほぼ形になってきました。しかし、もっと改善できるのではないか、どうすればもっと相手に響くプレゼンテーション内容になるのかを、ずっと考えていました。とにかく時間はありませんでしたが、納入先の方にとって1番有益な情報提供とは何なのかをギリギリまで突き詰めていきました。
単なる機能の説明ではなく、実際病院で検査を行った際に起こる様々なケースを想定した説明。
トラブルを未然に防ぎ、より測定の精度を上げるための説明。
出力されたデータ内容を患者様に説明する際に内容をよりわかりやすく伝えるためのツール。
その他にも、ドクター、臨床検査技師、理学療法士、事務長など様々な立場の方に対して、プレゼンテーションを行うため、それぞれの方に当社の機器の魅力を伝えるための工夫や、多くの医療機関、研究施設に納入実績のある当社の信頼性に関する内容なども盛りこんでいきました。
結果は・・・
そしてとうとう本番の日を迎えました。当社の発表の順番は2番目。プレゼンテーションを行う相⼿は、ドクターや臨床検査技師、理学療法士や事務長など総勢20名ほど。すごい緊張感です。当日までにやれることは全てやったという自負がありましたので、不思議と競合他社のことは気になりませんでした。
そして10分間のプレゼンテーションの中で、今までやってきたことを全力で伝えました。事前準備や悩みぬいたプレゼンテーション内容が功を奏し、成功と言える結果でした。短い時間の中で、当社の機器の信頼性や精度の高さ、機能の充実面など、製品の魅力を伝えることができたと感じました。反響もあり、多くの質問をいただきました。先生方からの質疑応答を終えると1時間を越える商談となっていました。
プレゼンテーションでは手応えを感じましたが、まだ1週間の機器のデモンストレーションが残っています。
プレゼンテーションが上手くいったということは、当社の機器に対する期待も高まります。
それにしっかりと応えるデモンストレーションを行わなければなりません。プレゼンテーション内容と⽭盾がないよう、以前に行った説明を実機を使って証明すること。また、測定方法や解析方法の説明も行いますが、測定結果の解析方法に関してはわかりにくい部分もあるので、ここをいかにわかりやすく伝えるか。
この点も意識をしてデモンストレーションを実施しました。
競合の案件でしたが、このような経過を経て無事に注文をいただくことができました。
この案件の話をいただいてから受注まで約5ヶ月。本当に悩みましたし、苦労もしましたが、自身の努力が評価されて、このような結果に繋がったことは言葉で表せないくらい嬉しかったですし、自信にもなりました。
納品後は、ドクターや検査技師、理学療法士の方への、取り扱い説明会や立会い、勉強会などを複数回実施しました。導入していただく以上、お客様に精度の高い測定や分析を行っていただくためにこのようなフォローはしっかり行わなければなりません。
こうした日々の活動を通じて、お客様から、「湯瀬さんが勉強会で教えてくれたことが実際に現場で役にたったよ」「ありがとう」といった声をいただける。この瞬間が日ごろの努力が評価されたと本当にやりがいを感じる瞬間です。
今後もさらに専門知識を深め、スキルアップすることが、患者様の機能改善や社会復帰の支えになると考えています。そのためにも日々の営業活動に全力で取り組んでいきます。
そして、知識や経験を積極的に後輩に伝え、彼らにも多くのことを学び成長して欲しいと思っています。このような取り組みの積み重ねが、会社全体として、さらに多くの人々の健康に貢献していくことに繋がっていくと思っています。